Case 03 / アクセス解析インサイト

GA4データから、実数を導けるか

GA4の3テーブルを渡して経営会議向けの解析レポートを書かせました。3サイズとも実務水準に届かず、32Bですら3回中1回しか正確な数値を出せませんでした。

  • 実施 2026年8月
  • 試行 各モデル3回(n=3)
  • 対象 Qwen3 32B / 14B / 8B + Sonnet 5
  • 出力 計12本

Conclusion

結論

GA4の3テーブルを渡して経営会議向けの解析レポートを書かせました。3サイズとも実務水準に届かず、32Bですら3回中1回しか正確な数値を出せませんでした。

  1. 01

    同じ質問を3回して、3回とも違う数字が返ってきた

    アクセス解析データから経営会議向けのレポートを書かせました。32Bは1回目で主要な指標を正しく計算しながら、2回目は全体のコンバージョン数を528件(正しくは486件)、3回目はセッション数を44,000(正しくは38,000)と誤りました。設定も入力もまったく同じで、この差が出ます。1回だけ試して「使える」と判断すると危険です。

  2. 02

    「断定するな」と書いても、守られなかった

    プロンプトには「母数が小さいデータで断定しない」「対象外のページは除外する」と明示していました。それでもローカルの3サイズすべてが、この指示に引っかかりました。指示を書けば守られる、という前提が成立しません。

  3. 03

    計算はプログラムにやらせ、AIには解釈だけ任せる

    この検証で分かったのは、数値を扱う業務でガードレールをプロンプトに書いても効かないということです。計算はコードで実行し、AIには出た数字の意味づけだけを任せる設計が必要になります。実際にそれを試したのが次のケース(飲食店の月次レポート)です。

Input

入力:何を渡したか

実際に投入したデータを公開しています。

入力データ

架空のBtoB SaaSマーケティングサイト、2026年7月(比較対象:6月)。実在の企業・サイトとは無関係。CVの定義は「資料請求フォームの送信完了=/contact/thanks への到達」。

データ1:ページ別

「フォーム遷移率」=そのページを閲覧したセッションのうち /contact へ遷移した割合。/contact/contact/thanks は定義上該当しないため -

ページパス,セッション,ページビュー,平均エンゲージメント時間(秒),直帰率,離脱率,フォーム遷移率
/,12480,15200,42,0.58,0.34,0.021
/product,6240,7810,118,0.41,0.22,0.068
/pricing,3820,4650,95,0.36,0.19,0.112
/case-studies,2960,3720,143,0.33,0.25,0.054
/case-studies/manufacturing,95,140,205,0.28,0.18,0.084
/blog/dx-guide,4520,4890,168,0.79,0.74,0.004
/blog/ai-trends-2026,3180,3350,72,0.86,0.83,0.002
/contact,1240,1520,88,0.22,0.61,-
/contact/thanks,486,510,25,0.15,0.88,-
/company,890,1020,55,0.62,0.58,0.008
/recruit,620,780,92,0.71,0.69,0.000
/admin/login,45,180,220,0.11,0.22,0.000

データ2:チャネル別

チャネル,セッション(当月),セッション(前月),ユーザー(当月),新規ユーザー(当月),コンバージョン数(当月),コンバージョン数(前月)
Organic Search,18240,13220,15380,11920,158,180
Paid Search,6850,6420,5940,4180,172,165
Direct,7120,7480,5210,2340,96,104
Referral,3180,2940,2760,1980,42,38
Organic Social,1980,1640,1820,1560,12,14
Email,630,720,410,90,6,8

データ3:デバイス別

デバイス,セッション(当月),セッション(前月),平均エンゲージメント時間(秒),直帰率,コンバージョン数(当月),コンバージョン数(前月)
desktop,16720,15380,124,0.44,396,412
mobile,19760,15540,58,0.71,78,84
tablet,1520,1500,86,0.55,12,13
データ設計の整合性(検算済み):チャネル別・デバイス別ともに、セッション合計=38,000(前月32,420)/CV合計=486(前月509)で一致する。 /contact/thanks のセッション486は全体CV数486と一致し、CV計測の整合が取れている。 一方 ページ別セッションの合計は36,576 で全体(38,000)と一致しない — これは1セッションで複数ページを閲覧するためであり、正常。この不一致は意図的に仕込んだ検証要素(第3章 罠Z)。

Process

処理:どう投げたか

プロンプトは全モデルで同一、1文字も変えていません。

実行プロンプト(全モデル共通・改変禁止)

下記を1文字も変えずに全対象モデルへ投入する。末尾のデータ欄に、第2章の3つのCSV全文をそのまま貼り付ける。実体は 。

あなたはWebサイトのアクセス解析を担当するアナリストです。
以下のGoogle Analytics 4のデータを読み、経営会議に提出する「Webサイト解析インサイトレポート」を作成してください。

# 前提

- 対象サイト:BtoB向けSaaSのマーケティングサイト
- 対象期間:2026年7月(比較対象:2026年6月)
- コンバージョン(CV)の定義:資料請求フォームの送信完了(`/contact/thanks` への到達)

# 出力フォーマット(この形式を厳守)

## 1. サマリー
- 全体状況を3〜5点の箇条書きで示す。
- 各項目には必ず具体的な数値を入れる。

## 2. 主要指標
以下の表形式で出力する。
| 指標 | 当月 | 前月 | 増減 |
|------|------|------|------|

## 3. インサイト
発見した事実を3〜5件、以下の形式で記述する。
- **<見出し>** — <根拠となる数値> → <そこから何が言えるか>

## 4. 改善提案
以下の表形式で、優先度をつけて3件出力する。
| 優先度 | 提案 | 根拠 | 期待効果 |
|--------|------|------|----------|

## 5. データ上の注意点
- 今回のデータで判断できないこと、解釈に注意が必要な点を箇条書きで示す。

# ルール(厳守)

- 与えられたデータから読み取れる事実のみに基づくこと。データにない数値・事実を推測で補完しないこと。
- 比率(コンバージョン率など)や増減率は、与えられた実数から自分で計算すること。計算結果は小数第2位まで(増減率は小数第1位まで)記載する。
- 母数(セッション数)が小さいデータについては、その旨を明記し、断定的な結論を書かないこと。
- サイトの運営目的(資料請求の獲得)に照らして分析対象とすべきでないページが含まれている場合は、除外した上で分析し、除外した理由を「5. データ上の注意点」に記載すること。
- 合計してはいけない値を合計しないこと。
- 改善提案は、必ず本データ内の数値を根拠として示すこと。一般論だけの提案を書かないこと。
- 出力は日本語のみとする。

# データ1:ページ別(2026年7月)

(ここに input_GA4_ページ別.csv の全文を貼り付ける)

# データ2:チャネル別(2026年7月/6月比較)

(ここに input_GA4_チャネル別.csv の全文を貼り付ける)

# データ3:デバイス別(2026年7月/6月比較)

(ここに input_GA4_デバイス別.csv の全文を貼り付ける)
プロンプト設計の意図:ルール節に「母数が小さいデータは断定しない」「分析対象外ページは除外し理由を書く」「合計してはいけない値を合計しない」を明示的に書いている。つまり本ケースは「指示されていても守れるか」を見る設計である。指示なしで守れるかを見たい場合は別条件として分けること(同一プロンプトの原則を崩さないため、混ぜて実施しない)。

実施条件と手順

対象モデルと実行環境

モデル種別実行環境
Qwen3 32BローカルAWS EC2 g6e.xlarge / NVIDIA L40S ×1(VRAM 48GB)/ Ollama・Q4_K_M量子化
Qwen3 14Bローカル同上
Qwen3 8Bローカル同上
Claude Sonnet 5クラウドAWS Bedrock(us-west-2)— 品質の基準線。マシンスペック非公開のためローカル勢と同列比較しない

検証01・02と同一構成を維持する。過去ケースとの比較可能性を保つため、モデル構成は変えないこと。追加したいモデルがある場合は、既存4モデルに加える形にする。

手順

  1. 3つのCSVを第4章のプロンプト末尾に貼り付け、投入用プロンプトを1本作る(この1本を全モデルで使い回す
  2. 各モデルへ投入し、出力を全文保存する。応答時間と出力トークン数を記録する
  3. thinking の有無・量子化条件・コンテキスト長設定を記録する(検証02で32Bの応答が282秒に伸びた要因がthinking動作とみられるため)
  4. 出力を と突き合わせ、7軸で採点する
試行回数について:検証01・02はいずれも n=1(各1回)で実施しており、出力のブレ幅が未測定という限界を抱えている。本ケースは可能であれば各モデル3回試行し、計算値のブレを記録してほしい。3回が難しい場合は n=1 で実施し、その旨を結果レポートに明記すること。

記録項目

  • 各モデルの出力全文
  • 応答時間(秒)/出力トークン数
  • thinking の有無・量子化条件・コンテキスト長
  • 7軸の採点(◎○△×)と判定理由
  • 計算誤りの具体的な内容(どの数値をどう間違えたか)
  • 罠X・Y・Z それぞれへの対応可否
  • 試行回数と、複数回実施した場合のブレ幅

Output

出力:何が返ってきたか

全12件を公開しています。クリックで出力のJSONを開きます。

モデル試行
claude-sonnet-5クラウドrun1run2run3
qwen3:32brun1run2run3
qwen3:14brun1run2run3
qwen3:8brun1run2run3

Scoring

採点:どう測ったか

採点キーはモデル出力を1件も見ないうちに確定させています。実行後に基準を足したり緩めたりしていません。

仕込んだ検証要素(採点者向け・モデルには開示しない)

データには、モデルの弱点が表面化するよう意図的に要素を埋め込んである。採点はこれらを軸に行う。

A. 拾ってほしいインサイト(4件)

ID内容根拠となる数値
A1流入は増えたがCVは減ったOrganic Search:セッション +38.0%(13,220→18,240)に対しCV -12.2%(180→158)、CVR 1.36%→0.87%
A2増加分の受け皿がブログで、フォーム導線が機能していない/blog/dx-guide(4,520・直帰率0.79・遷移率0.4%)、/blog/ai-trends-2026(3,180・0.86・0.2%)。/pricing の11.2%と1桁以上の差
A3モバイルのCV効率がデスクトップの約1/6モバイルCVR 0.39% vs デスクトップ2.37%。セッション構成比52.0%に対しCV構成比16.0%。モバイルは前月比+27.2%と最も伸びている
A4高効率チャネル/高遷移ページの特定Paid Search CVR 2.51%(全チャネル1位)、または /pricing フォーム遷移率11.2%(全ページ1位)

A1とA2を結びつけられるかが本ケースの核心。チャネル別テーブルとページ別テーブルという別々の表を横断しないと「なぜ流入増がCVに繋がらないのか」に答えられない。単表内で完結する観察(「オーガニックが増えた」「ブログの直帰率が高い」)を並べるだけでは A1・A2 の捕捉とは認めない。

B. 引っかかってほしくない罠(3件)

罠X:母数の小さいページ

/case-studies/manufacturing はフォーム遷移率 8.4% と全ページ中2位の高さだが、セッションはわずか95。「最も効率の良いページ」「ここを強化すべき」と断定したら減点。母数の小ささに言及し、参考値・要追加観測として扱えていれば正解。

罠Y:分析対象外のページ

/admin/login(社内管理画面・45セッション・エンゲージメント時間220秒)と /recruit(採用ページ・620セッション)は、資料請求CVを目的とする分析の対象外。これらを他ページと同列に論じたり、改善提案の対象にしたら減点。また /contact/thanks はCV完了ページであり、直帰率0.15やエンゲージメント時間25秒を「優秀/問題」と評価する意味はない。除外理由を「データ上の注意点」に書けていれば加点。

罠Z:合計してはいけない値

ページ別セッションの合計は 36,576。これを「全体セッション」として扱ったり、チャネル別合計(38,000)との差1,424を「計測漏れ」等と誤って解釈したら減点。1セッションで複数ページを閲覧するため合計に意味がない、と指摘できていれば正解。

C. ハルシネーションの監視対象

  • データにない数値の創作 — 業界平均CVR、過去12ヶ月推移、ユーザー属性(業種・企業規模)、広告費・CPA、流入キーワード
  • データにない因果の断定 — 「ブログ読者が価格ページへ移動している」等、遷移経路データがないのに事実として書く(推測と明示すれば可

ベンチマーク:想定正解レポート

採点の基準。完全一致を求めるものではないが、太字部分は必須要素。実体は 。

検算済みの正解値

指標当月(7月)前月(6月)増減
セッション38,00032,420+17.2%
コンバージョン数486509-4.5%
コンバージョン率1.28%1.57%-0.29pt
チャネルCVR(当月)CVR(前月)セッション増減CV増減
Organic Search0.87%1.36%+38.0%-12.2%
Paid Search2.51%2.57%+6.7%+4.2%
Direct1.35%1.39%-4.8%-7.7%
Referral1.32%1.29%+8.2%+10.5%
Organic Social0.61%0.85%+20.7%-14.3%
Email0.95%1.11%-12.5%-25.0%
デバイスCVR(当月)CVR(前月)セッション構成比CV構成比セッション増減CV増減
desktop2.37%2.68%44.0%81.5%+8.7%-3.9%
mobile0.39%0.54%52.0%16.0%+27.2%-7.1%
tablet0.79%0.87%4.0%2.5%+1.3%-7.7%

モバイルCVR ÷ デスクトップCVR = 0.167(約1/6)/ページ別フォーム遷移率トップは /pricing 11.2%(セッション3,820)、次点 /case-studies/manufacturing 8.4%(セッション95=母数過小)/ページ別セッション合計 36,576(全体38,000と不一致)

想定正解レポート(全文)

## 1. サマリー

- セッションは38,000で前月比+17.2%(32,420→38,000)と大きく伸びた一方、コンバージョンは486件で-4.5%(509→486)と減少。CVRは1.57%→1.28%へ悪化した。
- 流入増の主因はOrganic Search(+38.0%、13,220→18,240セッション)だが、同チャネルのCVは-12.2%(180→158)、CVRは1.36%→0.87%へ低下している。
- Organic Searchの受け皿はブログ記事2本とみられ、/blog/dx-guide(4,520セッション・直帰率0.79・フォーム遷移率0.4%)、/blog/ai-trends-2026(3,180・0.86・0.2%)はいずれもフォームへの導線が機能していない。
- モバイルはセッションの52.0%を占めるがCVは16.0%にとどまる。モバイルCVR 0.39%はデスクトップ2.37%の約1/6。
- Paid SearchはCVR 2.51%と全チャネル中最も効率が高いが、セッションの伸びは+6.7%にとどまる。

## 2. 主要指標

| 指標 | 当月 | 前月 | 増減 |
|------|------|------|------|
| セッション | 38,000 | 32,420 | +17.2% |
| コンバージョン数 | 486 | 509 | -4.5% |
| コンバージョン率 | 1.28% | 1.57% | -0.29pt |
| デスクトップCVR | 2.37% | 2.68% | -0.31pt |
| モバイルCVR | 0.39% | 0.54% | -0.15pt |

## 3. インサイト

- **流入は増えたがCVは減った** — Organic Searchはセッション+38.0%(+5,020)に対しCV-12.2%(-22件)、CVRは1.36%→0.87%。→ 増加した流入がCV導線に乗っていない。
- **増加分の受け皿がブログで、フォームへの導線が機能していない** — /blog/dx-guide と /blog/ai-trends-2026 は計7,700セッションを集めるが、直帰率0.79/0.86、フォーム遷移率0.4%/0.2%。/pricing の11.2%、/product の6.8%と比べ1桁以上低い。
- **モバイルのCV効率がデスクトップの約1/6** — モバイルCVR 0.39%(78/19,760)に対しデスクトップ2.37%(396/16,720)。セッション構成比52.0%に対しCV構成比16.0%。さらにモバイルは前月比+27.2%と最も伸びており、影響は拡大している。
- **/pricing がCV意欲の高い接点** — フォーム遷移率11.2%と全ページ中最高。セッション3,820と母数も十分にある。
- **Paid Searchが最も効率的なチャネル** — CVR 2.51%で1位。CVが前月比プラス(+4.2%)の数少ないチャネルでもある。

## 4. 改善提案

| 優先度 | 提案 | 根拠 | 期待効果 |
|--------|------|------|----------|
| 高 | モバイルのCV導線改善(フォーム入力・価格表示のモバイル最適化) | モバイルCVR 0.39% vs デスクトップ2.37%、セッション構成比52.0%、前月比+27.2% | モバイルCVRが1.0%まで改善すれば月間+120件規模の増加が見込める |
| 高 | ブログ記事から /pricing・/product へのCTA設置 | ブログ2本で7,700セッション・フォーム遷移率0.4%/0.2%に対し、/pricing は11.2% | Organic Searchの増加分(+5,020セッション)をCV導線に接続できる |
| 中 | Paid Searchの予算増額を検討 | CVR 2.51%で最高効率だがセッション増は+6.7%にとどまる | 現在のCVRを維持できれば、投下量に比例したCV増が期待できる |

## 5. データ上の注意点

- 単月(2026年7月)と前月比較のみのデータであり、季節性や中長期のトレンドは判断できない。
- /case-studies/manufacturing はフォーム遷移率8.4%と高いが、セッション95と母数が小さく、評価は参考値にとどめるべき。追加観測が必要。
- /admin/login(社内管理画面・45セッション)と /recruit(採用ページ・620セッション)は、資料請求CVを目的とする分析の対象外として除外した。
- /contact/thanks はCV完了ページであり、直帰率・エンゲージメント時間を他ページと同列に評価する意味はない。なお同ページのセッション486は全体CV数486と一致しており、CV計測の整合は取れている。
- ページ別セッションの合計(36,576)は全体セッション(38,000)と一致しない。1セッションで複数ページを閲覧するため、ページ別セッションを合計して全体を算出することはできない。
- 本データにはCV到達までの遷移経路が含まれないため、どのページがCVに寄与したかの因果は特定できない。フォーム遷移率は相関を示す指標にとどまる。

採点基準(7軸)

検証01・02と同じ7軸の枠組みを、本タスク向けに読み替えたもの。

#観点見るポイント
1数値計算の正確性第6章の検算値と一致するか。四捨五入の桁は指定どおりか(比率は小数第2位、増減率は小数第1位)
2インサイトの捕捉A1〜A4のうち何件を拾えたか。数値の羅列で終わらず「何が言えるか」まで書けているか
3母数の扱い罠Xを回避しているか。/case-studies/manufacturing(セッション95)に断定を与えていないか
4対象外データの除外罠Y・Zを回避しているか。除外理由を第5セクションに明示しているか
5ハルシネーションデータにない数値・因果を創作していないか
6改善提案の妥当性提案が本データの数値に紐づいているか。一般論で終わっていないか。優先度の判断に論理があるか
7フォーマット遵守・日本語品質指定の5セクション・表形式を守っているか/他言語混入・不自然な表記がないか

採点の目安

判定条件
正解キーをほぼ完全に再現(計算誤りなし、必須インサイト4件を捕捉、罠3件をすべて回避、提案がデータに紐づく)
主要点は捉えるが、計算の軽微な誤り/インサイト1件の欠落/表現の粗さがある
計算誤りが複数/必須インサイトを2件以上取りこぼし/罠に1つ以上引っかかる、のいずれか
×ハルシネーション、フォーマット逸脱、他言語混入など実務利用に支障

記録テンプレート

観点Qwen3 32BQwen3 14BQwen3 8BClaude Sonnet 5
1 数値計算の正確性
2 インサイトの捕捉(/4件)
3 母数の扱い(罠X)
4 対象外データの除外(罠Y・Z)
5 ハルシネーション
6 改善提案の妥当性
7 フォーマット・日本語
総合
応答時間 / 出力トークン(クラウドは参考)
採点者について:検証01ではClaude Sonnet 5に採点させたため、評価対象の1つが評価者を兼ねる利益相反が生じた。本ケースでは可能な限り人間が採点するか、採点をモデルに任せる場合は評価対象に含まれないモデルを使うこと。いずれの場合も採点者を結果レポートに明記する。

Result

結果

総合評価(7軸)

採点者:Claude Opus 5(評価対象4モデルに含まれないため利益相反なし)/各モデル3試行の総合判定

観点Qwen3 32BQwen3 14BQwen3 8BClaude Sonnet 5
1 数値計算の正確性
3回中1回のみ正確

3回中1回のみ正確
×
3回とも完全一致
2 インサイト捕捉(/4件)2 / 0 / 00 / 1 / 00 / 0 / 04 / 4 / 3
3 母数の扱い(罠X)××
4 対象外データの除外(罠Y・Z)×
5 ハルシネーション×××
6 改善提案の妥当性×
7 フォーマット遵守・日本語×
3/3で思考混入
×
総合
△ / × / ×
×
× / △ / ×
×
× / × / ×

◎ / ○ / ○
検証01・02との比較で注意:検証02(資料要約)では14Bが「速度×品質のスイートスポット」という結論だった。 本ケースでは同じ14Bが最低評価に近い。タスクの質が変わればモデルの序列も変わるため、 「14Bが推奨デフォルト」という結論を数値業務にそのまま持ち込んではならない。

速度・実行環境

AWS EC2 g6e.xlarge(NVIDIA L40S ×1・VRAM 48GB)/Ollama 0.31.2/Q4_K_M量子化/num_ctx=16384think=true

モデルrun1run2run3出力tok(平均)tok/sthinking字数
Qwen3 32B236.2秒 61.3秒55.9秒2,06731.53,122〜4,986
Qwen3 14B78.7秒89.0秒103.9秒5,67664.613,779〜15,053 ※※
Qwen3 8B73.6秒58.5秒45.9秒6,215107.511,880〜17,991
Claude Sonnet 5189.5秒161.1秒183.6秒

※ モデルロード時間72.9秒を含む。ロード後は61.3/55.9秒。   ※※ 本文に混入していたものを後処理で分離した字数。   Sonnet 5 の時間はサブエージェント全体の実行時間で、測定対象が異なる(後述)。

検証02で見られた「32Bが極端に遅い」現象は再現しなかった。 検証02では32Bが282.3秒で14B(21.5秒)より1桁遅かったが、本ケースではロード後55〜61秒で、 むしろ14B(78〜104秒)より速い。要因は出力トークン数の差 (32Bは平均2,067、14Bは5,676)で、14Bが思考を延々と出力し続けたぶん時間がかかっている。 速度はモデルサイズではなく「どれだけ喋るか」に強く依存する

Discussion

考察

本ケース最大の発見:試行間のブレ

検証01・02は n=1 で実施しており、出力のブレ幅が未測定だった。本ケースで初めて各モデル3回試行を行い、同一モデル内の再現性の低さが可視化された。

Qwen3 32B:3回で全体数値がここまで動く

試行総セッション(正 38,000)CV数(正 486 / -4.5%)CVR(正 1.28%)判定
run138,000 ✅486(-4.5%)✅1.28% ✅
run238,000 ✅528(+3.9%)1.39%×
run344,000(+14.0%)508(+4.3%)1.15%×

run2・run3 はCV数が増加したと報告している(実際は -4.5% の減少)。 経営会議に出せば「集客もCVも好調」という真逆の意思決定を招く誤りであり、実害が最も大きい失敗モードにあたる。

他モデルのブレ

モデルrun1run2run3
14BCV「+13.6%(486→427)」と誤算。セッションも37,960/32,380と誤り主要指標は正確(38,000/486/1.28%)。罠Zに唯一言及罠X・罠Yの両方に直撃
8B罠Z直撃+「ボタン率」を創作罠Z直撃+「ブースト率」を創作罠Z直撃+プロンプト指示文をオウム返し
Sonnet 5インサイト4/4・罠3/3すべて回避(サマリー内で直帰率を誤記→自己訂正の注記を本文に残す罠Zへの言及が抜けた(
検証01・02の結果の再解釈が必要:過去2ケースは n=1 のため、 報告された品質は「たまたま引いた1回の出力」に過ぎない可能性がある。 とくに「32Bは網羅的で高精度」「14Bがバランス最良」という所見は、ブレ幅を測っていない前提の上に立っている。 今後の検証は n≧3 を標準とし、過去2ケースも機会があれば再測定すべき。

モデル別の所見

Qwen3 32B — 総合 :正解を出せる回もあるが信頼できない

  • 3回中2回で全体CV数・セッション数を誤る。上表のとおり。最重要インサイトA1(流入増・CV減)は3回とも捕捉できなかった。
  • 存在しない前月データを創作(run1)。「平均エンゲージメント時間 87秒→76秒」「直帰率 55.6%→57.8%」を主要指標表に記載したが、いずれも前月値はデータに存在しない。
  • A1の符号を取り違えた。run1 は「有機検索のCV数が前月比+7.8%増 — 158件(前月180)」と記述。数字は減っているのに「増」と書いている(正:-12.2%減)。
  • フォーマットと日本語は3回とも安定。thinking も正常に分離(3,122〜4,986字)。

Qwen3 14B — 総合 ×:計算より先にフォーマットで失格

  • 3回すべてで思考文が本文に混入。think=true を指定しても <think> タグを出力せず、英語の思考文 13,779〜15,053字がレポート本文の前に出力される。本文(1,155〜1,604字)の約10倍の分量
  • 3回すべてで出力の先頭が 语句(簡体字)。検証02で8Bに見られた簡体字混入が14Bで再現した。
  • 3回とも最高フォーム遷移率ページを /product(6.8%)と誤認(正:/pricing 11.2%)。
  • run2 のみ主要指標が正確で、罠Zに唯一言及したモデル。ただし「差異あり。解析結果に影響がある可能性」止まりで、「合計に意味がない」という核心には至らなかった。
语句

Okay, let's tackle this query. The user wants a Web Analytics Insight Report based on the provided Google Analyt...
(英語の思考が約14,000字続いた後、ようやく「## 1. サマリー」が始まる)
運用上の含意:14Bを業務に組み込む場合、思考部分を除去する後処理が必須。 ただし本検証では <think> タグが出力されないため、タグベースの除去は機能しない。 「最初の ## 1. 以降を本文とみなす」といったフォーマット依存の力技が必要になり、堅牢性に欠ける。

Qwen3 8B — 総合 ×:実務利用に耐えない

  • 3回すべてで罠Zに直撃。ページ別セッション合計 36,576 を「全体セッション数」として採用し、全体CVRを1.33%(正1.28%)と誤算。増減の矢印も「36,576 → 32,420」と逆向きに書いている。
  • 存在しない指標を創作。run1「ボタン率(全体)54.2%」、run2「ブースト率 58%」。run1 はさらに「ボタン率を40%にすると、4520 → 3620の減少」という意味不明な改善提案に発展した。
  • run3 はプロンプトの出力フォーマット指示文をそのままオウム返ししてからレポートを書き始めた。
  • run2 は /case-studies/manufacturing の遷移率8.4%を「コンバージョン率」と誤認(実際は全ページ2位の高さ)。罠Xとは逆方向に誤読したうえで改善提案に採用した。

Claude Sonnet 5 — 総合 :基準線・3回とも実務水準

試行インサイト罠X罠Y罠Z判定
run14/4
run24/4/recruit欠落
run33/4言及なし
  • 主要検算値は3回とも完全一致(38,000 / 32,420 / +17.2% / 486 / 509 / -4.5% / 1.28% / 1.57% / -0.29pt)。
  • 本ケースの核心であるA1とA2の結合(オーガニック流入増 × ブログの導線不全)を run1・run2 で明示的に達成。
  • run2 はサマリー内で直帰率を誤記し、自己訂正の注記を本文に残した。訂正はできているが、経営会議提出物としては粗さが残る。
  • run3 は /contact 到達1,240 → CV486 から「完了率39.19%」を導出。計算は妥当で留保も付けたが、遷移経路データがない以上この率の解釈には限界がある。

仕込んだ罠の突破状況

プロンプトの「ルール(厳守)」節に、3つの罠すべてへの対処を明示的に書いた上で実施した。つまり「指示されていても守れるか」を見る条件である。

32B14B8BSonnet 5
X:母数95のページ
/case-studies/manufacturing 遷移率8.4%

run2で提案採用
×
run3でトラフィック増を提案
×
run2でCTA追加を提案

3回とも母数言及・断定回避
Y:分析対象外ページ
/admin/login/recruit/contact/thanks

3回とも/admin/login除外
×
run3で/contact/thanks改善を提案
×
曖昧な言及のみ

run2で/recruit欠落
Z:合計してはいけない値
ページ別合計 36,576

使用せず(言及もなし)

run2のみ言及(核心に至らず)
×
3回とも全体値として採用

run3で言及なし
「指示すれば守れる」は成立しない: 8Bは「合計してはいけない値を合計しないこと」と明示されたプロンプトで、3回とも合計して全体値に使った。 14B・32Bも「母数が小さいデータは断定しない」と書かれた上で、母数95のページを改善提案に載せた。 ガードレールをプロンプトの自然言語に委ねる設計は、ローカルLLMでは機能しない。

検証の目的と位置づけ

「ローカルLLM検証代行サービス」の社内検証ケース第3弾。閉域環境でローカルLLMがどこまで実務に使えるかを、業務タスク単位で確かめる。

タスク定義

Google Analytics 4 のエクスポートデータ(3テーブル)を入力とし、経営会議に提出するWebサイト解析インサイトレポートを生成させる。出力は「サマリー/主要指標/インサイト/改善提案/データ上の注意点」の5セクション構成。

なぜこのタスクを選んだか

  • 発生頻度が高い — 月次のアクセス解析レポートは多くの企業で定例化しており、工数も大きい
  • これまでの2ケースと質が違う — 検証01(議事メモ整理)・検証02(資料要約)はいずれも「書かれていることを整形する」タスクだった。本ケースは数値から新しい値を導出し、複数の表を横断して因果を推論する必要がある
  • 失敗の実害が見える — 計算を誤ったレポート、母数の小さいデータに飛びついた提案は、そのまま誤った意思決定につながる
特に見たい3点:計算能力— 量子化されたローカルモデルが除算・パーセント計算・前月比を正確にこなせるか。 ②表の横断参照— チャネル別(オーガニック流入増)とページ別(ブログの高直帰率)を結びつけられるか、単表内で完結する観察に留まるか。 ③統計的な慎重さ— 母数95件のページに飛びつかないか。「もっともらしいが誤った示唆」を出すかどうかの試金石であり、実務では最も危険な失敗モードにあたる。

Implications

実務への示唆

事業(ローカルLLM/LAM)への示唆

① 数値業務は「LLM×非LLM」の分業が前提

本ケースの失敗は大半が算術と集計範囲の判断で起きている。CVR・前月比・構成比の計算をLLMに委ねる設計は、 ローカルモデルでは成立しない。計算はコード(SQL・Python)で確定させ、LLMには「その数値から何が言えるか」の 言語化だけを任せる構成にすれば、本ケースの罠X・Y・Zはすべてプログラム側で封じられる。 これは「LLMに何をやらせないか」を決める設計力の価値を裏づけており、当社サービスの提供価値の中核になる。

② 「ローカルで十分」の境界線が引けた

タスクの質該当ケースローカルLLMの適合
書かれていることを整形・要約する検証01(議事メモ)・検証02(資料要約)14B/32Bで実用水準
数値を導出し、複数表を横断して推論する検証03(本ケース)3サイズいずれも不可

移行判定チェックリストに「タスクが数値の導出を含むか」という分岐を追加すべき。 含む場合はローカル単体では提案せず、計算をプログラム側に寄せた構成を前提にする。

③ 検証の n=1 は危険という反省

32Bが3回中1回だけ正解を出した事実は、n=1の検証なら「32Bは正確」と結論しかねなかったことを意味する。 顧客に提示する検証レポートで n=1 のまま断定するのは、当社の信頼性リスクである。 今後の検証代行サービスでは n≧3 とブレ幅の開示を標準仕様にする

④ 商談で使える具体例が得られた

  • 「同じ質問を3回投げると、CV数が486・528・508と変わる」— ローカルLLM導入の期待値調整に使える実例
  • 「プロンプトに『合計するな』と書いても3回とも合計した」— ガードレール設計の必要性を説明する材料
  • 「14Bは思考文14,000字を本文の前に出力する」— 後処理・出力整形の工程が必要な理由の実物

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