Case 03 / アクセス解析インサイト
GA4データから、実数を導けるか
GA4の3テーブルを渡して経営会議向けの解析レポートを書かせました。3サイズとも実務水準に届かず、32Bですら3回中1回しか正確な数値を出せませんでした。
Conclusion
結論
GA4の3テーブルを渡して経営会議向けの解析レポートを書かせました。3サイズとも実務水準に届かず、32Bですら3回中1回しか正確な数値を出せませんでした。
-
01
同じ質問を3回して、3回とも違う数字が返ってきた
アクセス解析データから経営会議向けのレポートを書かせました。32Bは1回目で主要な指標を正しく計算しながら、2回目は全体のコンバージョン数を528件(正しくは486件)、3回目はセッション数を44,000(正しくは38,000)と誤りました。設定も入力もまったく同じで、この差が出ます。1回だけ試して「使える」と判断すると危険です。
-
02
「断定するな」と書いても、守られなかった
プロンプトには「母数が小さいデータで断定しない」「対象外のページは除外する」と明示していました。それでもローカルの3サイズすべてが、この指示に引っかかりました。指示を書けば守られる、という前提が成立しません。
-
03
計算はプログラムにやらせ、AIには解釈だけ任せる
この検証で分かったのは、数値を扱う業務でガードレールをプロンプトに書いても効かないということです。計算はコードで実行し、AIには出た数字の意味づけだけを任せる設計が必要になります。実際にそれを試したのが次のケース(飲食店の月次レポート)です。
Input
入力:何を渡したか
実際に投入したデータを公開しています。
入力データ
架空のBtoB SaaSマーケティングサイト、2026年7月(比較対象:6月)。実在の企業・サイトとは無関係。CVの定義は「資料請求フォームの送信完了=/contact/thanks への到達」。
データ1:ページ別
「フォーム遷移率」=そのページを閲覧したセッションのうち /contact へ遷移した割合。/contact と /contact/thanks は定義上該当しないため -。
ページパス,セッション,ページビュー,平均エンゲージメント時間(秒),直帰率,離脱率,フォーム遷移率 /,12480,15200,42,0.58,0.34,0.021 /product,6240,7810,118,0.41,0.22,0.068 /pricing,3820,4650,95,0.36,0.19,0.112 /case-studies,2960,3720,143,0.33,0.25,0.054 /case-studies/manufacturing,95,140,205,0.28,0.18,0.084 /blog/dx-guide,4520,4890,168,0.79,0.74,0.004 /blog/ai-trends-2026,3180,3350,72,0.86,0.83,0.002 /contact,1240,1520,88,0.22,0.61,- /contact/thanks,486,510,25,0.15,0.88,- /company,890,1020,55,0.62,0.58,0.008 /recruit,620,780,92,0.71,0.69,0.000 /admin/login,45,180,220,0.11,0.22,0.000
データ2:チャネル別
チャネル,セッション(当月),セッション(前月),ユーザー(当月),新規ユーザー(当月),コンバージョン数(当月),コンバージョン数(前月) Organic Search,18240,13220,15380,11920,158,180 Paid Search,6850,6420,5940,4180,172,165 Direct,7120,7480,5210,2340,96,104 Referral,3180,2940,2760,1980,42,38 Organic Social,1980,1640,1820,1560,12,14 Email,630,720,410,90,6,8
データ3:デバイス別
デバイス,セッション(当月),セッション(前月),平均エンゲージメント時間(秒),直帰率,コンバージョン数(当月),コンバージョン数(前月) desktop,16720,15380,124,0.44,396,412 mobile,19760,15540,58,0.71,78,84 tablet,1520,1500,86,0.55,12,13
/contact/thanks のセッション486は全体CV数486と一致し、CV計測の整合が取れている。
一方 ページ別セッションの合計は36,576 で全体(38,000)と一致しない — これは1セッションで複数ページを閲覧するためであり、正常。この不一致は意図的に仕込んだ検証要素(第3章 罠Z)。Process
処理:どう投げたか
プロンプトは全モデルで同一、1文字も変えていません。
実行プロンプト(全モデル共通・改変禁止)
下記を1文字も変えずに全対象モデルへ投入する。末尾のデータ欄に、第2章の3つのCSV全文をそのまま貼り付ける。実体は 。
あなたはWebサイトのアクセス解析を担当するアナリストです。 以下のGoogle Analytics 4のデータを読み、経営会議に提出する「Webサイト解析インサイトレポート」を作成してください。 # 前提 - 対象サイト:BtoB向けSaaSのマーケティングサイト - 対象期間:2026年7月(比較対象:2026年6月) - コンバージョン(CV)の定義:資料請求フォームの送信完了(`/contact/thanks` への到達) # 出力フォーマット(この形式を厳守) ## 1. サマリー - 全体状況を3〜5点の箇条書きで示す。 - 各項目には必ず具体的な数値を入れる。 ## 2. 主要指標 以下の表形式で出力する。 | 指標 | 当月 | 前月 | 増減 | |------|------|------|------| ## 3. インサイト 発見した事実を3〜5件、以下の形式で記述する。 - **<見出し>** — <根拠となる数値> → <そこから何が言えるか> ## 4. 改善提案 以下の表形式で、優先度をつけて3件出力する。 | 優先度 | 提案 | 根拠 | 期待効果 | |--------|------|------|----------| ## 5. データ上の注意点 - 今回のデータで判断できないこと、解釈に注意が必要な点を箇条書きで示す。 # ルール(厳守) - 与えられたデータから読み取れる事実のみに基づくこと。データにない数値・事実を推測で補完しないこと。 - 比率(コンバージョン率など)や増減率は、与えられた実数から自分で計算すること。計算結果は小数第2位まで(増減率は小数第1位まで)記載する。 - 母数(セッション数)が小さいデータについては、その旨を明記し、断定的な結論を書かないこと。 - サイトの運営目的(資料請求の獲得)に照らして分析対象とすべきでないページが含まれている場合は、除外した上で分析し、除外した理由を「5. データ上の注意点」に記載すること。 - 合計してはいけない値を合計しないこと。 - 改善提案は、必ず本データ内の数値を根拠として示すこと。一般論だけの提案を書かないこと。 - 出力は日本語のみとする。 # データ1:ページ別(2026年7月) (ここに input_GA4_ページ別.csv の全文を貼り付ける) # データ2:チャネル別(2026年7月/6月比較) (ここに input_GA4_チャネル別.csv の全文を貼り付ける) # データ3:デバイス別(2026年7月/6月比較) (ここに input_GA4_デバイス別.csv の全文を貼り付ける)
実施条件と手順
対象モデルと実行環境
| モデル | 種別 | 実行環境 |
|---|---|---|
| Qwen3 32B | ローカル | AWS EC2 g6e.xlarge / NVIDIA L40S ×1(VRAM 48GB)/ Ollama・Q4_K_M量子化 |
| Qwen3 14B | ローカル | 同上 |
| Qwen3 8B | ローカル | 同上 |
| Claude Sonnet 5 | クラウド | AWS Bedrock(us-west-2)— 品質の基準線。マシンスペック非公開のためローカル勢と同列比較しない |
検証01・02と同一構成を維持する。過去ケースとの比較可能性を保つため、モデル構成は変えないこと。追加したいモデルがある場合は、既存4モデルに加える形にする。
手順
- 3つのCSVを第4章のプロンプト末尾に貼り付け、投入用プロンプトを1本作る(この1本を全モデルで使い回す)
- 各モデルへ投入し、出力を全文保存する。応答時間と出力トークン数を記録する
- thinking の有無・量子化条件・コンテキスト長設定を記録する(検証02で32Bの応答が282秒に伸びた要因がthinking動作とみられるため)
- 出力を と突き合わせ、7軸で採点する
記録項目
- 各モデルの出力全文
- 応答時間(秒)/出力トークン数
- thinking の有無・量子化条件・コンテキスト長
- 7軸の採点(◎○△×)と判定理由
- 計算誤りの具体的な内容(どの数値をどう間違えたか)
- 罠X・Y・Z それぞれへの対応可否
- 試行回数と、複数回実施した場合のブレ幅
Scoring
採点:どう測ったか
採点キーはモデル出力を1件も見ないうちに確定させています。実行後に基準を足したり緩めたりしていません。
仕込んだ検証要素(採点者向け・モデルには開示しない)
データには、モデルの弱点が表面化するよう意図的に要素を埋め込んである。採点はこれらを軸に行う。
A. 拾ってほしいインサイト(4件)
| ID | 内容 | 根拠となる数値 |
|---|---|---|
| A1 | 流入は増えたがCVは減った | Organic Search:セッション +38.0%(13,220→18,240)に対しCV -12.2%(180→158)、CVR 1.36%→0.87% |
| A2 | 増加分の受け皿がブログで、フォーム導線が機能していない | /blog/dx-guide(4,520・直帰率0.79・遷移率0.4%)、/blog/ai-trends-2026(3,180・0.86・0.2%)。/pricing の11.2%と1桁以上の差 |
| A3 | モバイルのCV効率がデスクトップの約1/6 | モバイルCVR 0.39% vs デスクトップ2.37%。セッション構成比52.0%に対しCV構成比16.0%。モバイルは前月比+27.2%と最も伸びている |
| A4 | 高効率チャネル/高遷移ページの特定 | Paid Search CVR 2.51%(全チャネル1位)、または /pricing フォーム遷移率11.2%(全ページ1位) |
A1とA2を結びつけられるかが本ケースの核心。チャネル別テーブルとページ別テーブルという別々の表を横断しないと「なぜ流入増がCVに繋がらないのか」に答えられない。単表内で完結する観察(「オーガニックが増えた」「ブログの直帰率が高い」)を並べるだけでは A1・A2 の捕捉とは認めない。
B. 引っかかってほしくない罠(3件)
罠X:母数の小さいページ
/case-studies/manufacturing はフォーム遷移率 8.4% と全ページ中2位の高さだが、セッションはわずか95。「最も効率の良いページ」「ここを強化すべき」と断定したら減点。母数の小ささに言及し、参考値・要追加観測として扱えていれば正解。
罠Y:分析対象外のページ
/admin/login(社内管理画面・45セッション・エンゲージメント時間220秒)と /recruit(採用ページ・620セッション)は、資料請求CVを目的とする分析の対象外。これらを他ページと同列に論じたり、改善提案の対象にしたら減点。また /contact/thanks はCV完了ページであり、直帰率0.15やエンゲージメント時間25秒を「優秀/問題」と評価する意味はない。除外理由を「データ上の注意点」に書けていれば加点。
罠Z:合計してはいけない値
ページ別セッションの合計は 36,576。これを「全体セッション」として扱ったり、チャネル別合計(38,000)との差1,424を「計測漏れ」等と誤って解釈したら減点。1セッションで複数ページを閲覧するため合計に意味がない、と指摘できていれば正解。
C. ハルシネーションの監視対象
- データにない数値の創作 — 業界平均CVR、過去12ヶ月推移、ユーザー属性(業種・企業規模)、広告費・CPA、流入キーワード
- データにない因果の断定 — 「ブログ読者が価格ページへ移動している」等、遷移経路データがないのに事実として書く(推測と明示すれば可)
ベンチマーク:想定正解レポート
採点の基準。完全一致を求めるものではないが、太字部分は必須要素。実体は 。
検算済みの正解値
| 指標 | 当月(7月) | 前月(6月) | 増減 |
|---|---|---|---|
| セッション | 38,000 | 32,420 | +17.2% |
| コンバージョン数 | 486 | 509 | -4.5% |
| コンバージョン率 | 1.28% | 1.57% | -0.29pt |
| チャネル | CVR(当月) | CVR(前月) | セッション増減 | CV増減 |
|---|---|---|---|---|
| Organic Search | 0.87% | 1.36% | +38.0% | -12.2% |
| Paid Search | 2.51% | 2.57% | +6.7% | +4.2% |
| Direct | 1.35% | 1.39% | -4.8% | -7.7% |
| Referral | 1.32% | 1.29% | +8.2% | +10.5% |
| Organic Social | 0.61% | 0.85% | +20.7% | -14.3% |
| 0.95% | 1.11% | -12.5% | -25.0% |
| デバイス | CVR(当月) | CVR(前月) | セッション構成比 | CV構成比 | セッション増減 | CV増減 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| desktop | 2.37% | 2.68% | 44.0% | 81.5% | +8.7% | -3.9% |
| mobile | 0.39% | 0.54% | 52.0% | 16.0% | +27.2% | -7.1% |
| tablet | 0.79% | 0.87% | 4.0% | 2.5% | +1.3% | -7.7% |
モバイルCVR ÷ デスクトップCVR = 0.167(約1/6)/ページ別フォーム遷移率トップは /pricing 11.2%(セッション3,820)、次点 /case-studies/manufacturing 8.4%(セッション95=母数過小)/ページ別セッション合計 36,576(全体38,000と不一致)
想定正解レポート(全文)
## 1. サマリー - セッションは38,000で前月比+17.2%(32,420→38,000)と大きく伸びた一方、コンバージョンは486件で-4.5%(509→486)と減少。CVRは1.57%→1.28%へ悪化した。 - 流入増の主因はOrganic Search(+38.0%、13,220→18,240セッション)だが、同チャネルのCVは-12.2%(180→158)、CVRは1.36%→0.87%へ低下している。 - Organic Searchの受け皿はブログ記事2本とみられ、/blog/dx-guide(4,520セッション・直帰率0.79・フォーム遷移率0.4%)、/blog/ai-trends-2026(3,180・0.86・0.2%)はいずれもフォームへの導線が機能していない。 - モバイルはセッションの52.0%を占めるがCVは16.0%にとどまる。モバイルCVR 0.39%はデスクトップ2.37%の約1/6。 - Paid SearchはCVR 2.51%と全チャネル中最も効率が高いが、セッションの伸びは+6.7%にとどまる。 ## 2. 主要指標 | 指標 | 当月 | 前月 | 増減 | |------|------|------|------| | セッション | 38,000 | 32,420 | +17.2% | | コンバージョン数 | 486 | 509 | -4.5% | | コンバージョン率 | 1.28% | 1.57% | -0.29pt | | デスクトップCVR | 2.37% | 2.68% | -0.31pt | | モバイルCVR | 0.39% | 0.54% | -0.15pt | ## 3. インサイト - **流入は増えたがCVは減った** — Organic Searchはセッション+38.0%(+5,020)に対しCV-12.2%(-22件)、CVRは1.36%→0.87%。→ 増加した流入がCV導線に乗っていない。 - **増加分の受け皿がブログで、フォームへの導線が機能していない** — /blog/dx-guide と /blog/ai-trends-2026 は計7,700セッションを集めるが、直帰率0.79/0.86、フォーム遷移率0.4%/0.2%。/pricing の11.2%、/product の6.8%と比べ1桁以上低い。 - **モバイルのCV効率がデスクトップの約1/6** — モバイルCVR 0.39%(78/19,760)に対しデスクトップ2.37%(396/16,720)。セッション構成比52.0%に対しCV構成比16.0%。さらにモバイルは前月比+27.2%と最も伸びており、影響は拡大している。 - **/pricing がCV意欲の高い接点** — フォーム遷移率11.2%と全ページ中最高。セッション3,820と母数も十分にある。 - **Paid Searchが最も効率的なチャネル** — CVR 2.51%で1位。CVが前月比プラス(+4.2%)の数少ないチャネルでもある。 ## 4. 改善提案 | 優先度 | 提案 | 根拠 | 期待効果 | |--------|------|------|----------| | 高 | モバイルのCV導線改善(フォーム入力・価格表示のモバイル最適化) | モバイルCVR 0.39% vs デスクトップ2.37%、セッション構成比52.0%、前月比+27.2% | モバイルCVRが1.0%まで改善すれば月間+120件規模の増加が見込める | | 高 | ブログ記事から /pricing・/product へのCTA設置 | ブログ2本で7,700セッション・フォーム遷移率0.4%/0.2%に対し、/pricing は11.2% | Organic Searchの増加分(+5,020セッション)をCV導線に接続できる | | 中 | Paid Searchの予算増額を検討 | CVR 2.51%で最高効率だがセッション増は+6.7%にとどまる | 現在のCVRを維持できれば、投下量に比例したCV増が期待できる | ## 5. データ上の注意点 - 単月(2026年7月)と前月比較のみのデータであり、季節性や中長期のトレンドは判断できない。 - /case-studies/manufacturing はフォーム遷移率8.4%と高いが、セッション95と母数が小さく、評価は参考値にとどめるべき。追加観測が必要。 - /admin/login(社内管理画面・45セッション)と /recruit(採用ページ・620セッション)は、資料請求CVを目的とする分析の対象外として除外した。 - /contact/thanks はCV完了ページであり、直帰率・エンゲージメント時間を他ページと同列に評価する意味はない。なお同ページのセッション486は全体CV数486と一致しており、CV計測の整合は取れている。 - ページ別セッションの合計(36,576)は全体セッション(38,000)と一致しない。1セッションで複数ページを閲覧するため、ページ別セッションを合計して全体を算出することはできない。 - 本データにはCV到達までの遷移経路が含まれないため、どのページがCVに寄与したかの因果は特定できない。フォーム遷移率は相関を示す指標にとどまる。
採点基準(7軸)
検証01・02と同じ7軸の枠組みを、本タスク向けに読み替えたもの。
| # | 観点 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 1 | 数値計算の正確性 | 第6章の検算値と一致するか。四捨五入の桁は指定どおりか(比率は小数第2位、増減率は小数第1位) |
| 2 | インサイトの捕捉 | A1〜A4のうち何件を拾えたか。数値の羅列で終わらず「何が言えるか」まで書けているか |
| 3 | 母数の扱い | 罠Xを回避しているか。/case-studies/manufacturing(セッション95)に断定を与えていないか |
| 4 | 対象外データの除外 | 罠Y・Zを回避しているか。除外理由を第5セクションに明示しているか |
| 5 | ハルシネーション | データにない数値・因果を創作していないか |
| 6 | 改善提案の妥当性 | 提案が本データの数値に紐づいているか。一般論で終わっていないか。優先度の判断に論理があるか |
| 7 | フォーマット遵守・日本語品質 | 指定の5セクション・表形式を守っているか/他言語混入・不自然な表記がないか |
採点の目安
| 判定 | 条件 |
|---|---|
| ◎ | 正解キーをほぼ完全に再現(計算誤りなし、必須インサイト4件を捕捉、罠3件をすべて回避、提案がデータに紐づく) |
| ○ | 主要点は捉えるが、計算の軽微な誤り/インサイト1件の欠落/表現の粗さがある |
| △ | 計算誤りが複数/必須インサイトを2件以上取りこぼし/罠に1つ以上引っかかる、のいずれか |
| × | ハルシネーション、フォーマット逸脱、他言語混入など実務利用に支障 |
記録テンプレート
| 観点 | Qwen3 32B | Qwen3 14B | Qwen3 8B | Claude Sonnet 5 |
|---|---|---|---|---|
| 1 数値計算の正確性 | ||||
| 2 インサイトの捕捉(/4件) | ||||
| 3 母数の扱い(罠X) | ||||
| 4 対象外データの除外(罠Y・Z) | ||||
| 5 ハルシネーション | ||||
| 6 改善提案の妥当性 | ||||
| 7 フォーマット・日本語 | ||||
| 総合 | ||||
| 応答時間 / 出力トークン | (クラウドは参考) |
Result
結果
総合評価(7軸)
採点者:Claude Opus 5(評価対象4モデルに含まれないため利益相反なし)/各モデル3試行の総合判定
| 観点 | Qwen3 32B | Qwen3 14B | Qwen3 8B | Claude Sonnet 5 |
|---|---|---|---|---|
| 1 数値計算の正確性 | △ 3回中1回のみ正確 | △ 3回中1回のみ正確 | × | ◎ 3回とも完全一致 |
| 2 インサイト捕捉(/4件) | 2 / 0 / 0 | 0 / 1 / 0 | 0 / 0 / 0 | 4 / 4 / 3 |
| 3 母数の扱い(罠X) | △ | × | × | ◎ |
| 4 対象外データの除外(罠Y・Z) | △ | △ | × | ○ |
| 5 ハルシネーション | × | × | × | ◎ |
| 6 改善提案の妥当性 | △ | △ | × | ◎ |
| 7 フォーマット遵守・日本語 | ○ | × 3/3で思考混入 | × | ◎ |
| 総合 | △ △ / × / × | × × / △ / × | × × / × / × | ◎ ◎ / ○ / ○ |
速度・実行環境
AWS EC2 g6e.xlarge(NVIDIA L40S ×1・VRAM 48GB)/Ollama 0.31.2/Q4_K_M量子化/num_ctx=16384/think=true
| モデル | run1 | run2 | run3 | 出力tok(平均) | tok/s | thinking字数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Qwen3 32B | 236.2秒 ※ | 61.3秒 | 55.9秒 | 2,067 | 31.5 | 3,122〜4,986 |
| Qwen3 14B | 78.7秒 | 89.0秒 | 103.9秒 | 5,676 | 64.6 | 13,779〜15,053 ※※ |
| Qwen3 8B | 73.6秒 | 58.5秒 | 45.9秒 | 6,215 | 107.5 | 11,880〜17,991 |
| Claude Sonnet 5 | 189.5秒 | 161.1秒 | 183.6秒 | — | — | — |
※ モデルロード時間72.9秒を含む。ロード後は61.3/55.9秒。 ※※ 本文に混入していたものを後処理で分離した字数。 Sonnet 5 の時間はサブエージェント全体の実行時間で、測定対象が異なる(後述)。
Discussion
考察
本ケース最大の発見:試行間のブレ
検証01・02は n=1 で実施しており、出力のブレ幅が未測定だった。本ケースで初めて各モデル3回試行を行い、同一モデル内の再現性の低さが可視化された。
Qwen3 32B:3回で全体数値がここまで動く
| 試行 | 総セッション(正 38,000) | CV数(正 486 / -4.5%) | CVR(正 1.28%) | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| run1 | 38,000 ✅ | 486(-4.5%)✅ | 1.28% ✅ | △ |
| run2 | 38,000 ✅ | 528(+3.9%) ❌ | 1.39% ❌ | × |
| run3 | 44,000(+14.0%) ❌ | 508(+4.3%) ❌ | 1.15% ❌ | × |
run2・run3 はCV数が増加したと報告している(実際は -4.5% の減少)。 経営会議に出せば「集客もCVも好調」という真逆の意思決定を招く誤りであり、実害が最も大きい失敗モードにあたる。
他モデルのブレ
| モデル | run1 | run2 | run3 |
|---|---|---|---|
| 14B | CV「+13.6%(486→427)」と誤算。セッションも37,960/32,380と誤り | 主要指標は正確(38,000/486/1.28%)。罠Zに唯一言及 | 罠X・罠Yの両方に直撃 |
| 8B | 罠Z直撃+「ボタン率」を創作 | 罠Z直撃+「ブースト率」を創作 | 罠Z直撃+プロンプト指示文をオウム返し |
| Sonnet 5 | インサイト4/4・罠3/3すべて回避(◎) | サマリー内で直帰率を誤記→自己訂正の注記を本文に残す(○) | 罠Zへの言及が抜けた(○) |
モデル別の所見
Qwen3 32B — 総合 △:正解を出せる回もあるが信頼できない
- 3回中2回で全体CV数・セッション数を誤る。上表のとおり。最重要インサイトA1(流入増・CV減)は3回とも捕捉できなかった。
- 存在しない前月データを創作(run1)。「平均エンゲージメント時間 87秒→76秒」「直帰率 55.6%→57.8%」を主要指標表に記載したが、いずれも前月値はデータに存在しない。
- A1の符号を取り違えた。run1 は「有機検索のCV数が前月比+7.8%増 — 158件(前月180)」と記述。数字は減っているのに「増」と書いている(正:-12.2%減)。
- フォーマットと日本語は3回とも安定。thinking も正常に分離(3,122〜4,986字)。
Qwen3 14B — 総合 ×:計算より先にフォーマットで失格
- 3回すべてで思考文が本文に混入。
think=trueを指定しても<think>タグを出力せず、英語の思考文 13,779〜15,053字がレポート本文の前に出力される。本文(1,155〜1,604字)の約10倍の分量。 - 3回すべてで出力の先頭が
语句(簡体字)。検証02で8Bに見られた簡体字混入が14Bで再現した。 - 3回とも最高フォーム遷移率ページを
/product(6.8%)と誤認(正:/pricing11.2%)。 - run2 のみ主要指標が正確で、罠Zに唯一言及したモデル。ただし「差異あり。解析結果に影響がある可能性」止まりで、「合計に意味がない」という核心には至らなかった。
语句 Okay, let's tackle this query. The user wants a Web Analytics Insight Report based on the provided Google Analyt... (英語の思考が約14,000字続いた後、ようやく「## 1. サマリー」が始まる)
<think> タグが出力されないため、タグベースの除去は機能しない。
「最初の ## 1. 以降を本文とみなす」といったフォーマット依存の力技が必要になり、堅牢性に欠ける。Qwen3 8B — 総合 ×:実務利用に耐えない
- 3回すべてで罠Zに直撃。ページ別セッション合計 36,576 を「全体セッション数」として採用し、全体CVRを1.33%(正1.28%)と誤算。増減の矢印も「36,576 → 32,420」と逆向きに書いている。
- 存在しない指標を創作。run1「ボタン率(全体)54.2%」、run2「ブースト率 58%」。run1 はさらに「ボタン率を40%にすると、4520 → 3620の減少」という意味不明な改善提案に発展した。
- run3 はプロンプトの出力フォーマット指示文をそのままオウム返ししてからレポートを書き始めた。
- run2 は
/case-studies/manufacturingの遷移率8.4%を「低コンバージョン率」と誤認(実際は全ページ2位の高さ)。罠Xとは逆方向に誤読したうえで改善提案に採用した。
Claude Sonnet 5 — 総合 ◎:基準線・3回とも実務水準
| 試行 | インサイト | 罠X | 罠Y | 罠Z | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| run1 | 4/4 | ✅ | ✅ | ✅ | ◎ |
| run2 | 4/4 | ✅ | △ /recruit欠落 | ✅ | ○ |
| run3 | 3/4 | ✅ | ✅ | ❌ 言及なし | ○ |
- 主要検算値は3回とも完全一致(38,000 / 32,420 / +17.2% / 486 / 509 / -4.5% / 1.28% / 1.57% / -0.29pt)。
- 本ケースの核心であるA1とA2の結合(オーガニック流入増 × ブログの導線不全)を run1・run2 で明示的に達成。
- run2 はサマリー内で直帰率を誤記し、自己訂正の注記を本文に残した。訂正はできているが、経営会議提出物としては粗さが残る。
- run3 は
/contact到達1,240 → CV486 から「完了率39.19%」を導出。計算は妥当で留保も付けたが、遷移経路データがない以上この率の解釈には限界がある。
仕込んだ罠の突破状況
プロンプトの「ルール(厳守)」節に、3つの罠すべてへの対処を明示的に書いた上で実施した。つまり「指示されていても守れるか」を見る条件である。
| 罠 | 32B | 14B | 8B | Sonnet 5 |
|---|---|---|---|---|
X:母数95のページ/case-studies/manufacturing 遷移率8.4% |
△ run2で提案採用 |
× run3でトラフィック増を提案 |
× run2でCTA追加を提案 |
◎ 3回とも母数言及・断定回避 |
Y:分析対象外ページ/admin/login・/recruit・/contact/thanks |
○ 3回とも/admin/login除外 |
× run3で/contact/thanks改善を提案 |
× 曖昧な言及のみ |
○ run2で/recruit欠落 |
| Z:合計してはいけない値 ページ別合計 36,576 |
○ 使用せず(言及もなし) |
△ run2のみ言及(核心に至らず) |
× 3回とも全体値として採用 |
○ run3で言及なし |
検証の目的と位置づけ
「ローカルLLM検証代行サービス」の社内検証ケース第3弾。閉域環境でローカルLLMがどこまで実務に使えるかを、業務タスク単位で確かめる。
タスク定義
Google Analytics 4 のエクスポートデータ(3テーブル)を入力とし、経営会議に提出するWebサイト解析インサイトレポートを生成させる。出力は「サマリー/主要指標/インサイト/改善提案/データ上の注意点」の5セクション構成。
なぜこのタスクを選んだか
- 発生頻度が高い — 月次のアクセス解析レポートは多くの企業で定例化しており、工数も大きい
- これまでの2ケースと質が違う — 検証01(議事メモ整理)・検証02(資料要約)はいずれも「書かれていることを整形する」タスクだった。本ケースは数値から新しい値を導出し、複数の表を横断して因果を推論する必要がある
- 失敗の実害が見える — 計算を誤ったレポート、母数の小さいデータに飛びついた提案は、そのまま誤った意思決定につながる
Implications
実務への示唆
事業(ローカルLLM/LAM)への示唆
① 数値業務は「LLM×非LLM」の分業が前提
本ケースの失敗は大半が算術と集計範囲の判断で起きている。CVR・前月比・構成比の計算をLLMに委ねる設計は、 ローカルモデルでは成立しない。計算はコード(SQL・Python)で確定させ、LLMには「その数値から何が言えるか」の 言語化だけを任せる構成にすれば、本ケースの罠X・Y・Zはすべてプログラム側で封じられる。 これは「LLMに何をやらせないか」を決める設計力の価値を裏づけており、当社サービスの提供価値の中核になる。
② 「ローカルで十分」の境界線が引けた
| タスクの質 | 該当ケース | ローカルLLMの適合 |
|---|---|---|
| 書かれていることを整形・要約する | 検証01(議事メモ)・検証02(資料要約) | 14B/32Bで実用水準 |
| 数値を導出し、複数表を横断して推論する | 検証03(本ケース) | 3サイズいずれも不可 |
移行判定チェックリストに「タスクが数値の導出を含むか」という分岐を追加すべき。 含む場合はローカル単体では提案せず、計算をプログラム側に寄せた構成を前提にする。
③ 検証の n=1 は危険という反省
32Bが3回中1回だけ正解を出した事実は、n=1の検証なら「32Bは正確」と結論しかねなかったことを意味する。 顧客に提示する検証レポートで n=1 のまま断定するのは、当社の信頼性リスクである。 今後の検証代行サービスでは n≧3 とブレ幅の開示を標準仕様にする。
④ 商談で使える具体例が得られた
- 「同じ質問を3回投げると、CV数が486・528・508と変わる」— ローカルLLM導入の期待値調整に使える実例
- 「プロンプトに『合計するな』と書いても3回とも合計した」— ガードレール設計の必要性を説明する材料
- 「14Bは思考文14,000字を本文の前に出力する」— 後処理・出力整形の工程が必要な理由の実物
Files
使用した資料一式
実際に投入したデータ、プロンプト、採点キー、出力の実物です。加工していないため、同じ条件で再現できます。