Case 07 / EC年間レポート

日本語特化かどうかではなく、どの日本語特化モデルかで分かれた

集計済みの年間実績レポートを固定し、変数をモデルだけにして8モデルを比較しました。同一サイズ帯(8B)で4モデルを直接比較でき、Swallow 8B が14B相当の結果を出しています。

  • 実施 2026年8月
  • 試行 各モデル3回(n=3)
  • 対象 ローカル8モデル + Sonnet 5
  • 出力 全27件

Conclusion

結論

集計済みの年間実績レポートを固定し、変数をモデルだけにして8モデルを比較しました。同一サイズ帯(8B)で4モデルを直接比較でき、Swallow 8B が14B相当の結果を出しています。

  1. 01

    「日本語特化モデルは日本語に強い」とは言えなかった

    ECサイトの年間実績レポートを読ませ、8つのモデルで比べました。日本語特化をうたう2モデルのうち、Swallow 8B は14B相当の結果を出した一方、ELYZA JP 8B は解釈がほぼ全滅という正反対の結果になりました。「日本語特化かどうか」ではなく「どの日本語特化モデルか」で分かれます。

  2. 02

    数字をよく引用するモデルほど正確、ではなかった

    ELYZA JP 8B は数値の引用がもっとも多かったにもかかわらず、通期と期間を混同し、増減の向きを複数取り違え、存在しない前期比を作り出しました。日本語の流暢さと、内容の正確さは別物です。

  3. 03

    サイズが半分でも、同等の結果が出ることがある

    Swallow 8B は4.9GB・応答22.4秒で、qwen3:14b と同じスコアに届きました(応答は2倍速)。必要なマシンスペックは「モデルサイズ」ではなくタスクごとの実測で決めるべきだと分かります。なお、変化点そのものを特定できたのは Claude Sonnet 5 だけでした。

Input

入力:何を渡したか

実際に投入したデータを公開しています。

Process

処理:どう投げたか

プロンプトは全モデルで同一、1文字も変えていません。

Output

出力:何が返ってきたか

全27件を公開しています。クリックで出力のJSONを開きます。

モデル試行
claude-sonnet-5クラウドrun1run2run3
qwen3:32brun1run2run3
qwen3:14brun1run2run3
qwen3:8brun1run2run3
gemma3:12brun1run2run3
phi4:14brun1run2run3
llama3.1:8brun1run2run3
Swallow-8Brun1run2run3
ELYZA-JP-8Brun1run2run3

Scoring

採点:どう測ったか

採点キーはモデル出力を1件も見ないうちに確定させています。実行後に基準を足したり緩めたりしていません。

Result

結果

全モデルの結果

群A=レポートの表から直接読める指摘(5点満点)/ 群B=複数指標を突き合わせて初めて見える指摘(3点満点。このケースの中心)

モデル数値一致群A(5) 群B(3)罠回避 本文応答
claude-sonnet-5クラウド 5.05.0 2.7 3.00.02,543
qwen3:32b3.04.3 1.7 2.00.01,60066.7秒
Swallow 8B4.73.0 1.3 0.30.01,49822.4秒
qwen3:14b5.74.0 1.3 2.00.01,30351.1秒
phi4:14b3.03.0 0.7 0.71.01,37543.8秒
qwen3:8b2.33.3 0.7 1.00.01,19131.9秒
gemma3:12b1.03.3 0.3 2.00.01,71141.5秒
ELYZA JP 8B5.73.0 0.3 0.00.072219.6秒
llama3.1:8b3.04.0 0.0 0.30.389518.9秒
「数値一致」が多いほど良い、ではない。 ELYZA は数値一致5.7で Sonnet 5(5.0)を上回ったが、その数値の解釈がほぼ全滅している(次節)。 レポートに存在する数字を書けば機械照合は通るため、数値一致数を品質指標にしてはいけない

群Bへの到達状況

指摘到達したモデル
B1 売上より粗利の減少幅が大きい
売上-30.8% / 粗利-35.8%
Sonnet 5、qwen3:32b、qwen3:14b、Swallow、phi4
B2 リピート率の上昇は新規不振の裏返し
最高難度
Sonnet 5、qwen3:14b、Swallow、phi4、gemma3、ELYZA
B3 3月の変化点(カート放棄率とCVRの同時悪化) Sonnet 5 のみ
B3に到達したのはクラウドだけだった。 ローカル8モデルは「2つの指標を並べる」ところまでは行けるが、 「特定の月を変化点として同定し、そこで何が起きたかを問う」処理には届かなかった

同じ「B2に言及」でも中身が違う

Sonnet 5(最も精緻)

リピート率は54.3%→65.7%へ改善して見えるが、同時期に新規顧客数は1,180人→860人へ減少しており、 分母構成の変化による見かけ上の改善である可能性がある。 なおリピート顧客数自体は1,404人→1,644人と増加

裏返し論を述べたうえで、実数で反証も添えている。用意した正解キーより踏み込んでいた。

qwen3:32b(未到達)

リピート率は年間で54.3%→65.7%と改善。特に2026年4月以降は63.3%以上を維持。

改善として素直に受け取っている。

7軸の評価

◎=誤りゼロ / ○=軽微な誤り1〜2 / △=誤り3以上または重大な誤り1 / ×=破綻

Sonnet532B14B8B llamagemmaphi4 SwallowELYZA
①網羅性
②抽出の正確性 ×
③属性の正誤 ×
④曖昧な事項
⑤ハルシネーション ×
⑥ノイズ除外 ×
⑦日本語品質
⑦日本語品質は、ほぼ全モデルが◎だった。 英語混入は全27件でゼロ、日本語として破綻した出力もなかった。 検証04で 8B が「エマール本文」のような造語を出したのとは対照的で、 日本語の「書けること」自体は、もはや差がつく軸ではなくなっている。 差がついたのは、書かれた内容が正しいかどうかだった。

Discussion

考察

今回の焦点:8B帯4モデルの比較

同一サイズ帯(4.9〜5.2GB)で4モデルが揃った。うち2つが日本語特化。

モデル種別群B 本文応答所見
Swallow 8B日本語特化1.3 1,49822.4秒 qwen3:14b と同値。日本語も自然でビジネス文書として通用する
qwen3:8b汎用0.7 1,19131.9秒 「前年同期と比較して増加」とデータにない比較を創作
ELYZA JP 8B日本語特化0.3 72219.6秒 増減の反転が複数。前期比を創作
llama3.1:8b汎用0.0 89518.9秒 3試行とも群Bゼロ。表の読み上げに留まった
同じ8Bでも群Bは 0.0〜1.3 と開いた。 サイズだけでモデルを選ぶべきではないことが、はっきり出た。 そして日本語特化の2つが上下に分かれたことで、「日本語特化」というラベルも判断材料にならないと分かった。

Swallow の実際の出力

後半期(2026年1月〜6月)は、前半期と比較して売上高が減少しましたが、新規顧客獲得単価(CAC)が 大幅に増加し、ROASも低下しています。全体としては、粗利率の低下傾向が見られます。

「判断に注意が必要な点」では季節性・期間比較の歪み・母数のすべてに言及した。 ただし1件、事実誤認がある——「カート放棄率はサンプルサイズが小さい場合があり」。 カート放棄率の母数はセッション数(月17万〜31万)で大きく、返品率と取り違えている。 「母数に注意する」という形式は守ったが、対象を間違えた。

ELYZA の誤り

ELYZAの記述実際
「前期比で約25%の成長を遂げた」データに前期の記載はない(創作)
「新規顧客数は14,260人増加し」14,260は通期の総数。しかも-33.6%の減少
「広告費は33,820,000円から18,090,000円に減少」33,820,000は通期合計、18,090,000は後半。実際は+15.0%の増加
「粗利率は45.3%と安定的に推移した」48.0%→41.8%へ低下
「CVRは1.42%〜1.62%と比較的高く維持」1.17%まで低下(範囲も誤り)
通期・前半・後半の値を取り違え、増減の方向を複数箇所で反転させている。 数値そのものはレポートに存在するため機械照合は通るが、意味が伴っていない

「比較対象がないところに比較を作る」

入力レポートは12か月分のみで、前年データは含まれていない。それにもかかわらず——

モデル記述
ELYZA JP 8B「売上高は291,943,050円に達し、前期比で約25%の成長を遂げた」
llama3.1:8b「売上は291億9300万円に達し、前年比で増加した」
※ 単位も誤り(正しくは約2.9億円)
qwen3:8b「売上と粗利が前年同期と比較して増加し」
qwen3:32b「広告費は前半比115%増加※ 正しくは+15.0%。倍率と増加率の取り違え
4モデルが、存在しない比較を作った。 レポートに「前年」の記載は一切ない。比較対象がないところに比較を作るのは、 この種のタスクで繰り返し出る失敗モードといえる。
Sonnet 5・Swallow・gemma3・qwen3:14b には、この種の誤りが見られなかった。

Implications

実務への示唆

実務への示唆

モデル選定は「サイズ」でも「日本語特化かどうか」でもなく、タスクでの実測で決める。
用途推奨理由
ローカルで最も深い分析qwen3:32b 群B 1.7でローカル最高。ただし応答66.7秒とSwallowの3倍かかる
速度と質のバランスSwallow 8B 群B 1.3を22.4秒で。32Bの1/4の容量で14B相当。日本語も自然
変化点の同定が要る分析クラウド B3に到達したのは Sonnet 5 のみ。ローカルは現時点で届かない
避けるべきELYZA JP 8B
llama3.1:8b
数値の解釈に重大な誤りが出る。存在しない前年比を作る

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